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僕の生きる道 第一話「告知、余命一年」  [僕の生きる道]

僕が感動し、影響を受けたこの作品を紹介します。

第1回の今回は「告知、余命一年」です。

※このシリーズはネタばればれですので今後見るつもりの人は注意してくださいね。


第一話 「告知、余命一年」

 

 私立進学校陽輪学園の2年G組。中村秀雄(草彅剛)はこのクラスの担任で生物教師。授業はしっかりしているが、いわゆる熱血タイプの教師ではなく、あくまでも仕事と割り切って淡々とこなしている。生徒たちは受験に関係ない生物の授業に興味はなく、隠す素振りもなく数学や英語の勉強をしている。秀雄の授業を真面目に聞いているのは杉田めぐみ(綾瀬はるか)だけであった。

 

吉田均(内博貴)にいたっては気分が悪いから保健室に行くといって教科書をもっていこうとする始末。クラスの空気を察した秀雄は自分に言い聞かせるように言った。

「自習にします。模試も近いことですしね」。

 

 秀雄は教室を出るなり、同僚教師の秋本みどり(矢田亜希子)から声をかけられた。秀雄は密かにみどりに恋心を抱いていた。自然と顔がほころぶ。みどりは陽輪学園の理事長、秋本隆行(大杉 漣)の一人娘で2年G組の副担任。

「田中クンが万引きしたそうです」。

 

 

 「生徒の指導、ちゃんと頼むよ」。

秀雄が田中守(藤間宇宙)を連れて職員室に戻ると、やはり教頭の古田進助(浅野和之)から嫌味を言われた。理事長べったりのこの教頭、なにかにつけ秀雄につらくあたることでストレスを発散させている。


「君は将来を台無しにするつもりですか?」

「将来って何ですか」

「それはいい大学に入っていい会社に入ることです」

「それがいい将来ですか?」

「そりゃあそうですよ」

 秀雄が守を指導しきれないでいると、数学教師の久保勝(谷原章介)が「万引きなんかやってないで勉強ちゃちゃっとやっとけよ。いい大学に入って、いい会社に入っていて損はないんだから、な?」とくだけた口調でいとも簡単に守を説得した。

担任の秀雄のプライドは丸つぶれ。もっとも久保は理事長からも生徒からも信頼厚いエリート教師。秀雄では勝負にならない。

古田教頭がまた嫌味を言う。「君と久保先生、言っていることは同じなんだけどね」。

 

 社会科担当の岡田力(鳥羽 潤)が昼食の弁当を配っている。そんな中みどりが秀雄に伝える。「あっ、中村先生、健康診断の結果が届いていますから」


 

 

 その日の帰り道、秀雄はみどりと相合傘になった。

といってもたまたま帰りが一緒になって、秀雄しか傘を持っていなかったからだ。秀雄は内心ドキドキしていたが、みどりは昼間のやきとり弁当に砂肝が入っていなかった不満で頭がいっぱい。「じゃあ、食べにいきません?」。秀雄が行きつけの焼き鳥屋に誘ってみると「おいしい!」とみどりは喜んでくれた。

 意を決した秀雄は思いきって映画に誘ってみた。しかしみどりの反応をうかがいながら「なんかデートみたいですかねぇ。やっぱりやめましょう」と、冗談めかして自分からあっさり諦らめた。


 秀雄は1人暮らしのアパートに帰った。「よかった、足りて」財布の中身を確認した後、コートのポケットから昼間に職員室で受け取った健康診断の封筒が出てきた。
 再検査の通知。「どうせ、なんともないのに」と封筒を置いてうがいをする秀雄。


 後日、面倒くさいが敬明会病院で再検査を受け、検査結果を聞くために再び病院を訪れた。主治医は金田勉三(小日向文世)。

「中村さん奥さん、いらっしゃいます?」

「いえ、いませんけど」。秀雄は28歳、独身だ。

「じゃあ、ご両親と住んでいるのかな」

「すいませんけど仕事に戻らないといけないので検査結果を」

「できたら検査結果はご家族の方と一緒に聞いていただきたいんです」

秀雄の心に不安がよぎった。

「母が田舎にいますけど」

「検査結果について大切な話があります。」


「僕、何の病気ですか?」

 

 

 診察室を出た後、秀雄はアパートまでどうやって帰ったか覚えていなかった。心、ここにあらずの秀雄だが、条件反射のようにいつも通りうがいをしようとしていると、新聞の集金人がやって来た。

「できたら今度は長期の契約でお願いしたいんですよ。2年契約でもよろしいですかね?」

「はい」。

集金人が帰った後、秀雄は契約書の控えを見ながら呟いた。
 「一年にしといた方がよかったかな」。

 

 

 

28年間生きてきた。明日という日が当たり前にやってきた、今までは

僕は今日、余命1年と宣告された。

 

 

 

 

数日後、職員室でみどりと二人きりとなった秀雄は問いかけた。


「僕はみどり先生にふられたんですよね。仕事帰りのそば屋や洋食屋はOKだけど日曜日の映画はダメ。それってふられたってことですよね。どうして僕じゃダメなんですか?」

「どうしたんですか?急に」

「理由を聞きたいんです。正直に答えてください。そんなことを言ったら僕が傷つくんじゃないかということでもかまいません。ありのままの事実をお願いします。知りたいんです。お願いします。」 

 

「本当に思ったことを言っていいんですね」 。みどりは屋上に場所を移して秀雄に本心を伝えた。

「中村先生は真面目でいい人ですけど、小さくまとまっているというか、いつも人の顔色を伺って自分の思っていることを言わないじゃないですか。あっ、なんでも無難にこなすのが悪いとはいいませんけど、私は自分の考えをしっかり持ってて、それをちゃんと行動に移せる人に惹かれます。」

「そうですか、ありがとうございます。」

秀雄は完全にふられた。

 

 

その夜、秀雄はコンビニの帰りに4人組の少年に絡まれた。

「お金ください。」

「わかりました。あるだけ出しますから」

財布を奪われ暴行を受ける秀雄。

「カードの暗証番号を教えてください。」

「教えてください。教えてくれよ。」秀雄はそう呟きながらよろよろと立ち上がる。

「こっちが教えてほしいんだよ!なんで僕なんだよ。なんでお前えらみたいなヤツじゃなくてこの僕なんだよ。なんであと1年なんだよ。なんで僕が1年なんだよ!!」少年に掴みかかる秀雄。少年は秀雄を殴りつけると財布の中身を抜き出し逃げていった。

 

 

翌朝、秀雄は金田医師を訪ねた。

「間違いなんじゃないですか?僕の検査結果。誰かのと入れ替わったんじゃないですか?」

秀雄は混乱していた。

「それはない。あれは君のものだよ」

「でも1%でも0.5%でも間違いが起こる可能性はあるんですよね!!」

「僕は今まで地道に生きてきたんです。高校のときはちょっとでもいい大学に入れるように一生懸命勉強しました。ふわふわと女の子と付き合ったりもしませんでした。そして希望の大学に入れました。就職は一般企業も考えましたがあちこち転勤するのをさけたかったので高校教師になりました。転勤を避けたかったのは結婚してから家庭を持ったときのことを考えたからです。僕は別に大きな成功を望んだことはありません。毎日平穏無事に暮らせればいいんです。そりゃ小さいことは色々ありますよ。でも大きなトラブルは一度もなく過ごしてきたんです。そんな僕がこんな目にあうはずがないんですよ。おかしいと思いませんか?そんなの不公平ですよ。これは絶対何かの間違いなんですよ。そうでしょう先生!!」

 

すがるように訴える秀雄に対して金田は穏やかにこう答えた。
 「そうだね。君がそう思うなら間違いかもしれない。でも確かなことが一つだけある。それは君が今生きているということ。今生きているということに間違いはない。」

秀雄はしばらく考え込んだあと、ふらふらと部屋を出て行った。その日学校には行かなかった。

 

 

 学校を無断で休んだ秀雄。みどりは自分がひどいことを言ったからではないかと心配し、秀雄を訪ねる。家にいなかったので帰ろうとした所、自宅近くの公園で秀雄を見かける。

「どうして無断欠勤したんですか?」

「みどり先生には関係ないことですから」

「そうですか。わたしのせいなんじゃないですか?私の言ったことで先生を傷つけちゃったんじゃないかって」

「どうして僕がそんなことで傷つくんですか」

「いくらなんでも私、はっきり言い過ぎました。」

「確かに僕は無難に生きてきた人間です。でもそれはそういう人生が良いと思ったからそうしてきたんです。だからみどり先生にそういうことを言われたってショックなんて受けません。受けるわけがないじゃないですか。」

「そうならいいんですけど。はっきりさせておきたかったんです。中村先生とは長いお付き合いになりそうですから。」

「長い付き合い?」

「私腰掛け教師みたいに思われてるみたいですけど、本当はこの仕事ずっと続けていこうと思っているんです。だから…」

 

 

 

みどりが弁明をしていると、突然秀雄はみどりにキスをした。あっけにとられるみどり。

 「何するんですか」みどりは秀雄の頬を叩いた。

「僕だってやろうと思えばこういうことをできるんです。でもあえて無難な道を歩いてきたんです。僕は自分の生きてきた道を一度だって後悔したことなんかないんですから。」

そういうと秀雄はゆっくりと歩いて去っていった。みどりはしばらくその場に立ちつくした。

 

 

自宅に戻った秀雄はふと小学生の頃の文集を手にする。自然と笑みがこぼれる。

「将来の夢 テノール歌手」なに言ってんだか。

「どんな人になりたいか」

「僕は幸せな人間になりたいです。幸せな人間とは、後悔のない人生を生きている人だと思います。」

生意気な…

 

文集を置いた秀雄はカップラーメンを食べ始めた。

 

「幸せな人間とは、後悔のない人生を生きている人だと思います。」

 

 

秀雄の頬に涙がつたった。

 

 

 「後悔のない人生」

 

 

 

本当は後悔している。

僕はあの頃思い描いていた人生を生きてこなかった。

28年間も生きてきたのに…


秀雄がガン告知をうけ余命1年を宣告される第一話。

ある日、

あと1年しか生きられないことを知ったとき、

現実を受け入れることがなかなかできないでしょう。

間違いなんじゃないか。

どうして僕が。

なんであいつらじゃなくて僕なんだ。

不公平じゃないか。

 

そしてきっと秀雄のようにこれまでの人生を振り返るでしょう。

自分のこれまでの人生、後悔はなかっただろうか?

 

僕は明日死んでも悔いはない、

そういい切れればいいですが僕もそんな素晴らしい人生を歩いてきたわけではない。

もっとこうしていれば、あのときこうだったら…

 

人間、いずれ死ぬことはわかっている。遅かれ早かれ秀雄のような状況に陥るのです。

 

でも僕は今生きている。生きていることに間違いはない。

金田医師の言葉が胸に響く。

 

さて余談ですがこのドラマ、面白い演出の仕方をしています。

そう悲しすぎないような演出をしているのです。

例えば今回でいうと、告知。

実際の告知のシーンはありません。

そしてナレーションで余命1年と宣告されたことを伝えるところでは新聞の契約を1年にしておいた方が良かったかな、なんてことをセリフで言ったりしてます。

劇的なシーンでもあえて派手に演出せず淡々と日常を描いています。


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2005-09-25 19:51  nice!(10)  コメント(11)  トラックバック(2) 
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コメント 11

ドラ

またウルウルッと泣けてきました(T-T)
ドラマを見たときも、もし僕が余命1年と言われたら・・と考えました。
うーん・・ひたすら延命治療を受けたり、それこそ神頼みまでしてしまうでしょう・・。自暴自棄にもなるかもしれません。やはり不公平だ!何で自分なんだ!と間違いなく思います。そして・・今までの人生を後悔するでしょう・・。
今の僕でもまだ駄目なんです・・。少しは変わりましたがまだ駄目です・・。
by ドラ (2005-09-25 20:13) 

tyokyori-sousyano-kodoku

昔、小学校のテストで「ありの行列を見ていると、死に向かう人生を考える。生きるということは、死ぬことに向かって一歩一歩進んでいくことだ」みたいな文がありました。小学校5年だったと思います。国語のテストなのに、テストだということを忘れて読みました。人生観変わりました、そのテストで。
(今考えると、小学生のテストに出す文章ではないですよね)
生きるって「あたりまえ」じゃなくて、奇跡的な幸運であり、かならず終わりがあるものなんですよね。
今人生が終わったら、恐怖と悔いが残るかな・・・。悔いを残さないように、もう一度見つめなおそうっと、と思いました。
by tyokyori-sousyano-kodoku (2005-09-25 21:48) 

HAL

あと1年なら...
そう考えると何をしていいのか思い浮かばない。(>_<)
by HAL (2005-09-26 01:29) 

いいドラマでした。もともと演技はうまかったと思いますが、
このドラマからさらに草彅くんの演技に磨きがかかりました。
このドラマで考えさせられたことを2年間ですでに忘れてしまったな~。
リュージさんのレビューで少し思い出しましたよ。
by (2005-09-26 02:42) 

ピカチュウ

スゴイ力作っすね~
私もこのドラマは好きでした。
キムタクよりも、クサナギ君の方が芝居うまいと改めて感じた作品でもあった。
by ピカチュウ (2005-09-26 21:24) 

そら

そらはこのドラマは後半しか見てないです。
命は永遠ではないことを忘れてしまうんですよね。
ある日突然 命のカウントダウンをされると人は
どんな行動をとるんでしょうか?
奥が深い問題ですよね・・・
by そら (2005-09-26 22:25) 

のの

ツヨシは最初、キョンキョンのドラマで見たときは
「何てヘタクソなんだろう!」と思いましたが、
段々と上手になっていきましたね。
もう5年前ですが、舞台「蒲田行進曲」のヤス役は泣かされました。
by のの (2005-09-26 23:20) 

lead-an-easy-life

余命1年って言われたら・・・
仕事してるでしょうね。
休みは嫁ハンと買い物行って。
変わらない生活を送って余生を楽しむことしか出来ない気がします。
by lead-an-easy-life (2005-09-28 17:13) 

早稲田大学鋳物研究所スキー部長

このドラマはそういうことだったんですね。
「いまを生きる」ってことですね。
by 早稲田大学鋳物研究所スキー部長 (2005-10-02 12:03) 

muiz★mama

たぶん、見たことあるかも。
綾瀬はるかもでてたんだ。
もしmuizが余命1年、宣告されたら、
一週間誰にも会わず、泣き崩れた後、
ふつーに生活してるかも・・・。
ンナワケナイカナ?デモソウカモ。
by muiz★mama (2005-10-02 18:42) 

リュージ

みなさん、僕の自己満足シリーズに付き合ってくれて
ありがとうございます^^

ドラさん、こんばんは。
でも実際はそうですよね。素直に余命1年を受け入れられる人は
少ないと思います。僕も荒れるだろうなぁ^^
後悔のない人生…そういえるようになりたいですね。

うかつ者さん、こんばんは。
なんだかすごいテストですね^^
人生には必ず終わりが来ることを忘れて僕らは生きている。
精一杯生きていきたいですね。

HALさん、こんばんは。
でもそれはきっとHALさんが今、
充実した毎日を送っているということですよ^^

金さん、こんばんは。
草彅くんはこの役のためにわざと痩せたりしたらしいですよね。
迫真の演技でした。
僕もふとこのドラマを思い出して、改めて考えさせられました。

ピカチュウさん、こんばんは。
ちょっと頑張っちゃいました(笑)
キムタクもあじがあるというか彼独特の演技ですが
やはり草彅くんはテーマ性が強いこのような作品では
素晴らしい演技をしますよね。

そらさん、こんばんは。
僕らも余命は長くて数十年なんですよね。
今を大切にしないと後悔する日が…
僕もリカバリできるかな^^

ののさん、こんばんは。
僕は見ていませんが「蒲田行進曲」も大好評だったそうですよね。
映画「ホテルビーナス」の演技も良かったですし、
草彅くんは着実に俳優の道を進んでいますよね。

ふるさん、こんばんは。
ふるさんらしいお答えですね^^
やはり仕事は頑張っちゃいますよね。僕もきっとそうでしょう。
そして奥さんとの変わらない生活がふるさんにとって幸せな時間なんですよ。

えちさん、nice!ありがとうございます。

部長、こんばんは。
黒澤明の「生きる」の現代版ですね。
いまを生きることの大切さが伝わってくるドラマです。

muiz★mamaさん、こんばんは。
そうですね。綾瀬はるかも市原隼人も色々あった内くんも出てました。
やはり泣き崩れちゃいますかね。そのあと生活していく中できっと
muizさんのなにか変わるでしょう。
by リュージ (2005-10-02 21:42) 

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