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僕の生きる道 第二話「読まなかった本」 [僕の生きる道]

僕が感動し、影響を受けたこの作品を紹介します。

第2回の今回は「読まなかった本」です。

※このシリーズはネタばればれですので今後見るつもりの人は注意してくださいね。

【過去ログ】
第一話「告知、余命一年」


第二話 「読まなかった本」

 

 中村秀雄(草彅剛)は秋本みどり(矢田亜希子)と2人きりになってしまった。

「みどり先生怒ってますよね」

「喜んでいるように見えます」

「あのことは忘れてください」。秀雄は先日、強引にキスしたことを詫びた。

「忘れてくださいって自分が何したかわかっているんですか?」

「もういいですから」

「やっぱり聞いていいですか。どうしてあんなことしたんですか?」

秀雄がためらっていると、教頭の古田進助(浅野和之)が姿を現し、みどりは職員室を出ていった。


 秀雄は放課後、進路相談で教え子の赤坂栞(上野なつひ)と向き合っていた。

栞の偏差値では第一志望校は難しかった。本人もそのことは認識していたので、自ら久保勝(谷原章介)に数学の補習授業に出席させてほしいと志願していた。

「今の成績じゃ第一志望は難しいですね国立にするなら偏差値60ぐらいのところじゃないと」

「そんな低い大学行きたくありません」

「じゃあ、あと1年頑張るしかないですよ」

「そんなの無理です。1年しかないんですよ」

1年という言葉が秀雄に突き刺さる。

「志望校のレベルを落とすなんて、自分が許せません」

必死な栞に向かってずっと話を聞いていた秀雄は言った。

「バカじゃないの。」

栞は絶句した。

「今、バカって言いました?どういう意味ですか」

「たかが大学受験ですよ。そんなに真剣に悩むなんてバカらしいという意味です。」

「あなたが自分で言うようにあと1年じゃ無理です。あきらめるしかありませんね」

 

 自宅で書棚を整理する秀雄。「30歳でマイホームを買う方法」「年金マニュアル」「コツコツ人生指南」「日進月歩健康法」といった本をゴミ袋に入れていく。

僕もあきらめている。僕にはあと1年しかない。

ただ待つしか道はない。人生最期の日がやってくるのを…

 


 

 「いくらなんでもバカだとかあきらめろだとか生徒にそんなこと言ったりしてませんよね」。栞の一件はすぐに古田の耳に届いた。

けれど秀雄は謝るどころかこう切り替えした。

「確かにひどいことを言いました。でも教頭先生は生徒を思って怒っているわけじゃないですよね。僕の上司として責任を取るのが嫌なだけなんですよね」

「それからエアコンのことですけど、どうして電気代はケチるのにどうして理事長のお菓子代は贅沢なんですか?せこく経費で落としていることぐらい僕知ってますよ」

古田は反論できなかった。そんな秀雄をみどりは不思議そうに見つめる。

 


 その夜、秀雄は同僚たちに誘われて居酒屋にくりだした。

 「中村先生、言うときは言うのね」。英語の太田麗子(森下愛子)も体育の赤井貞夫(菊池均也)も社会科の岡田力(鳥羽 潤)も秀雄の変身ぶりをもちあげた。


 心地よく酔っぱらって部屋に帰った秀雄はそのまま布団にもぐり込み、夢を見た。子供の頃よく行った教会。誰かの葬儀だ。棺の中をのぞくと自分が横たわっていた。秀雄はハッと目覚め、時計の刻む音に恐怖を覚えた。


 

 

 翌日、秀雄は授業中に腹部に痛みを感じた。「あとは自習にします」。耐え切れなくなった秀雄は教室を出る。杉田めぐみ(綾瀬はるか)以外の生徒は何も気づかない。杉田めぐみが追いかけてくるが秀雄は「何でもありませんから」と教室に戻す。



「そりゃあ生徒に本当のことは言えませんよね。」

「え?」

「具合が悪いのは昨日飲みすぎたせいですよね。楽しくお酒を飲むのはかまいませんけど授業に差し支えるのはどうかと思います」。

「そうですよね。確かに本当のことなんていえませんよ」

みどりの言葉に秀雄は傷ついたが、本当のことを話すわけにいかなかった。

 

 秀雄はATMで百万円をおろすと、高級中華料理店で豪勢なディナーを1人きりで堪能した。ふと奥をのぞくと、秋本理事長(大杉漣)がテーブルを囲んでいる。久保は周りの教師からもみどりの結婚相手、そして将来の理事長候補と目されている男だ。つまりお見合いみたいなものか。「あっちのテーブルの会計も一緒に払います」。秀雄はお釣りも受け取らず店を出た。

 秀雄の豪遊ぶりは続いた。銀座のクラブでは「楽しい?」とホステスに聞かれ「楽しい」と答えた秀雄だったが、心の底から気持ちが晴れるはずがなかった。

 

 

 秀雄が本心をぶつけられる相手は主治医の金田勉三(小日向文世)しかいなかった。

「あと1年と思っていましたけど考え直しました。1年って結構長いですよね。」

「楽にしてください」

「死ぬこと考えるとやっぱり怖いんですよね。凄く痛いんだろうなぁとか苦しんだろうなぁとか。毎日毎日怖いんですよ。」

「そう感じるのは当然だよ。でも残りの人生それだけじゃない」

「何の痛みも感じないまま、楽にしてください」。

金田の言葉は秀雄には届いていない。

「そういう方法ちゃんとありますよね。先生知らないんですか」

秀雄は訴えたが、金田は冷静だった。

「中村さん、このまま少し入院しましょうか」

「楽にしてくれるんですね」

「そんなこと法が認めないよ。たとえ法が認めたとしても僕が認めない」

金田は入院の手続きをしようとするが看護婦の目を離した隙に秀雄は病院を抜けだした。


 

 

 行くあてなどない。もうお金はいらない。財布に残っていた全てのお金を街頭募金の箱に入れ、ふと目についた教会に入ると、聖歌隊が合唱の練習をしていた。一緒に歌っているうちに秀雄はいつしか穏やかな笑みを浮かべ、気づいたら崖に立っていた。

秀雄の顔からは表情が消えていた。秀雄は両手を大きく広げると宙に舞った…

 

 

秀雄は気が付くと病院にいた。そばには金田がいる。

 

「僕死ねなかったんですか」

「どうして僕はここにいるんですか」

「僕は自分で死ぬこともできないんですか」

「ああ、そうだ」

「僕の命ですよ。どうしようと勝手じゃないですか!」

「君に自分で死ぬ権利なんてない」

「ついさっき僕の患者さんが一人なくなった。1ヵ月後に娘さんの結婚式があってね。何とか1ヶ月、1ヶ月でいいから生きたいと最後まで言ってた。僕はそういう人を何人も見てきたんだ」

「気持ちが安定するまで入院してもらうよ。僕には君の残りの人生を支える義務があるから」

 

数日後、秀雄は学校に連絡する。みどりをはじめ同僚の教師が見舞いに訪れる。金田は自殺しようとしていた友達を助けるために崖から落ちたと説明していた。みどりは1冊の本を秀雄に届ける。

 

 「ねぇ先生、崖から落ちたとき死ぬって思った?」

同僚の体育教師の赤井が尋ねる。

「もちろん死ぬつもりでしたよ」

「やっぱり死ぬと思ったんだ」「中村先生って強運の持ち主よね」みどり以外の教師は秀雄の言葉を気に留める様子はないがみどりだけは違っていた。

秀雄の様子がおかしいことが気になっていたみどりは金田を訪ねる。

「本当に事故なんですか?最近中村先生の様子ちょっとおかしかったもので」

「本当に事故ですよ。自殺なんかじゃありません。」

「そうですよね。」

「秋本さん、あなたは中村さんの特別な人?」

「いえ、違いますけど」

 

 

一方秀雄は病院内で小さな命を見つめていた。

 

「母さん、僕だけど。別に用ってわけじゃないんだけど」秀雄は田舎の母親に電話をした。

たわいのない世間話をする。秀雄は聞きたいことがあった。

「あのさ、ちょっと聞いていい。母さん僕が生まれたときどう思った?」

 「母さん…そう」

秀雄は母の答えを聞いた。胸がつまり涙があふれてきて言葉を発することができなくなった。

秀雄は涙声を押し殺した。「友達を呼んでるから、また電話するね」そういって電話を切った。

 


 

「1年って28年より長いですよね」

「そうだよ」

秀雄はある決意をしたようだった。

 

 

退院した秀雄は1冊の本を持って教室に向かった。生徒たちは相変わらず英語や数学の教科書を開いている。

「机の上のものをしまってください」

生徒たちは意に介さない。

「しまいなさい!」秀雄は強い口調で言った。廊下を歩いていたみどりは秀雄の声に驚き教室をのぞく。生徒たちはしぶしぶ教科書をしまった。

 

「ここに一冊の本があります。
この本の持ち主はこの本を読みたいと思ったので買いました。
しかし今度読もう今度読もうと思いつつすでに1年がたちました。
この本の持ち主はこれを読む時間がなかったのでしょうか。多分違います。

読もうとしなかった、それだけです。

そのことに気づかない限り、
5年たっても10年たっても持ち主がこの本を読むことはないでしょう。

受験まであと1年です。
皆さんの中にはあと1年しかないと思っている人もいるかもしれません。

でもあと1年しかないと思って何もしない人は
5年あっても10年あっても何もしないと思います。

だから、1年しかないなんていってないでやってみましょう。
この1年やれるだけのことをやってみましょう。」

 

 

 

 

母さん、僕が生まれたときどう思った?

やっと逢えたねって。それからこの子のためなら自分の命は捨てられる、そう思ったかな

 

 

僕に自分で死ぬ権利なんかない。僕は生きる。

 

 

 

人生最期の日まで

 


余命1年を宣告された秀雄が前向きに生きていくことを決意する第二話。

余命を宣告された秀雄は徐々に死への恐怖に耐え切れなくなり、生活が荒れてくる。

もう、どうでもいいや。どうせあと1年しか生きられないんだから。

死への恐怖はますます大きくなり、やがて自ら命を絶つ決意をしてしまう。

 

自殺までしてしまう人はそういないかもしれませんが、生活が荒れてくるのはわかる気がします。貯金なんて意味がない。ぱぁ~と使っちゃおうって。

でもそんなことをしたって気持ちが晴れるわけではない。虚しいだけ。

 

秀雄は母親の言葉がきっかけで命の大切さに気が付く。そう親から授かった大切な命。自分で死ぬ権利なんかない。残りの人生を精一杯生きていくことを決意する。

 

そしてこの回ではこのドラマでも有名なシーンが2つ。

母親との電話のシーンと読まなかった本の話。

 

電話のシーンでは母親の言葉は全く聞かれない。あとで母の答えがわかる面白い演出ですね。

そしてすべて草彅くんの演技で伝わってくる。

 

読まなかった本の話は言うことなし…胸に突き刺さりますね(苦笑)

時間がない、余裕がないなんて言ってないで、やってみましょう。 


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2005-10-02 18:10  nice!(6)  コメント(11)  トラックバック(1) 
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nice! 6

コメント 11

ドラ

キタ!!この本の話で完璧に僕の心をつかんだんですよ^^
夏目漱石も「時間が○○しかない」ではなく「時間がまだ○○もある」と何で言わないんだと怒ったことがあるそうです。
死を選ぶ権利・・確かに自分の命は自分の為だけのものではないですね。
先延ばしにしていては何もできない・・・心に突き刺さります。
by ドラ (2005-10-02 21:38) 

リュージ

この本の話はグサグサッときますよね(笑)
ドラマもこの2話がターニングポイントとなる重要な話なので僕も引き込まれちゃいました。
僕はとても影響されやすいのでこの本の話がきっかけで、やれるだけやってみよう精神で仕事をしています。^^
僕は幸い自殺を考えるようなことは今までないですけどそういうことを考えてしまう人たちにはたった一つの命について、考えてみて欲しいです。
by リュージ (2005-10-02 22:16) 

tyokyori-sousyano-kodoku

ほんと、やれるだけやってみよう、ですね。
わたしも、やれるだけやってみようと思います。
あー、励まされた!!
by tyokyori-sousyano-kodoku (2005-10-02 22:44) 

HAL

泣ける〜〜〜(>.<)
by HAL (2005-10-03 01:32) 

lead-an-easy-life

これは涙腺刺激本ですね。
by lead-an-easy-life (2005-10-03 23:08) 

そう、第2話はターニングポイントでしたね。
それと、金田先生みたいな主治医に会えたのは大きいですよね。
また見たくなったなぁ。DVD買おっかなぁ。
by (2005-10-05 01:00) 

そう、第2話はターニングポイントでしたね。
それと、金田先生みたいな主治医に会えたのも大きいですね。
また見たくなったなぁ。DVD買おっかなぁ。
by (2005-10-05 01:02) 

そう、第2話はターニングポイントでしたね。
それと、金田先生みたいな主治医に会えたのも大きいですね。
また見たくなったなぁ。DVD買おっかなぁ。
by (2005-10-05 01:02) 

そう、第2話はターニングポイントでしたね。
それと、金田先生みたいな主治医に会えたのも大きいですね。
また見たくなったなぁ。DVD買おっかなぁ。
by (2005-10-05 01:03) 

のの

どんな状況に置かれようとも、途中で投げないこと、大切ですね!
by のの (2005-10-08 23:30) 

リュージ

みなさん、レスが遅れてすみませんでした。

うかつ者さん、こんばんは。
やる前からあきらめちゃいけないんですよね。
やれるだけやってみましょう^^

HALさん、こんばんは。
ホント泣けますよね。(T_T)

ふるさん、こんばんは。
このドラマは泣き所が満載なんですよ。
でもとても前向きになれます。

ヒロシさん、なんだか凄いことになっていますね(笑)
そうですよね。金田先生がいいですよね~
僕も病気になったら金田先生みたいな人に診てもらいたいです。

ののさん、こんばんは。
最後まで精一杯やれるだけやれば後悔なんてしないのでしょうね。
by リュージ (2005-10-16 20:05) 

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